設計課題の指導に関して、今年は少し方針を改めてみた。これまでに計3課題を見てきて、自分が指導した学生が大学代表として大きな舞台で発表する機会にも恵まれた。一方で、建築設計に進まない学生にも教える必要があり、ピックアップとボトムアップのどちらも求める必要がある私学の設計指導のリズムがようやく身体に染み込み、その上でのブラッシュアップを考えられるようになった。
まず、自身の授業に限らない名城大学の設計課題指導においては、以下の3点を次年度から実施する段取りが完了。
・CADデザインの授業ソフトウェアを見直し、設計課題との連動性をあげる
・CADデザインの授業で自作の図面化をする
・2年生課題でPCによるアウトプットの提出
というところが取り組みのメイン。CADで自身の作品図面を引いた経験のない卒業生が設計・施工の現場にたつという状況が起こりうる現状に対して、ある程度の交通整理をした。
2年の間ずっと手書きで課題をやらせるという古風の教育方針。個人的にはとても好きだったんですが...。時代との折衷案です。
さらに、
・イヤーブックの新設
も大きな進捗。自作が代表として冊子に残るということは大きな目標になるし、切磋琢磨を生むものだと考えている。目標を多く設定して、作品を大切にする人が増えることはいいことかと。
さて、自身の授業に関しては、チャートを導入したのが大きな変化。
これは建築家の富永大毅さんが実践しているのをSNSで見て、今年名城大学でレクチャーしていただいた猪熊さんと話し、効果がありそうだと確認して導入したもの。
チャートという枠組みだけ参考にして、指標やその他項目はオリジナル。
大枠は以下。
・課題説明時に6つの指標でエスキスを行うと伝達
・エスキス時にそれぞれに五段階評価をし、6軸のチャートを作成
・エスキス時には「ディスカッション・ポイント」を3つにまとめて最初に説明
・エスキス後にはエスキスで言われたことを自分でメモしてもらう
・上記がまとめて記入でき、過去のエスキス歴が残るA3シートを作成
ちなみに6指標は以下を出した。
・コンセプト×空間|コンセプトが空間として表現できているか。
・空間の連続性|設計している空間は連続しているか。
・造形力|造形力のある作品になっているか。
・幸福度|施主や街の人などの利用者にこの建築を通してどんな幸せが提供できるか
・地域度|地域や敷地に対応・配慮したデザインはできているか
・提言力|この作品の波及性や提言性はどれくらいあるのか
実際にエスキスで使ったのは4回なのだが、結果としてはなかなか効果的だったと感じている。
1. チャートによるエスキス時の評価
まずは、エスキス時に自分の作品の足りないところが数値として知れることがメリットとしてあげられる。エスキスをするのはかなりエネルギーがいるので、正直、常に同じだけのエネルギーがあてられているとは言えない。つまり、「抜く」こともあるが、抜かれた方は何が悪いのかがわからず、「設計って先生の好みじゃん」と思う場面も多々ある。が、足りない点が明確化されることで、そうではないと思うのではないか。
2.毎回の蓄積
同じ指標で見ているため、空間のブラッシュアップがされやすく、前回の自分をきちんと見つめ直す効果がある。
3.指標の精度
これに関しては大いに改善の余地がある。現時点では佐藤の基準で決めており、それは間違っていない指標ではあると思う。が、スペシャルな存在を生み出すために必要な操作としての精度を検討する必要がある。
4. 説明の明快さ
3つのディスカッションポイントの提示は、エスキスをよりスムーズにした。学生の中には自分で情報を整理できないままエスキスに臨むものも多い。要点をまとめることで説明がクリアになるし、何より、そのエスキスの目次としてこちらが話の要点をつかみやすくなった。
さて、そんなこんなでやってみたエスキスの結果は、1/8の最終授業ででる。どんなアウトプットが出てくるのか楽しみです。後日の更新では反省しているかもしれない。笑。
教育も日々精進です。
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