毎年、新年になると書く、現在地の確認。
そして、昨年を思い返す。
名古屋に来てから定期的に書くようになったから、もう6年目。 2016年は「地域の自助・共助・公助」
2019年は「建築文化」
2020年は「リサーチング・プレーヤー」
2021年は「楽しいが身の回りにあること」
2022年は「生活民芸舎」
2023年は「むきあう」
2024年は「暮らしをつくる」
ーー
2023年は、プロジェクトが大きく成長した1年だった。
新潟では、旭硝子財団の助成金をいただき、稲藁断熱の本格実験を始めた。
研究では、大幸財団の助成金をいただき、修士の学生と他大学の先生と備讃諸島の研究もしている。
建築雑誌から派生したメンバーでの、研究会も採択された。
やりたいことをやるのに、潤沢に機会を得られた、研究者としては充実の1年だった。
継続している研究室プロジェクトも着実に前進。
ナノメートルアーキテクチャーとの砂子邸では、解体&リデザインワークショップを実施。そして、実際の廃材リデザインとブックプロジェクトも軌道に。
1-1 architectsとの刈谷市のまちづくりでは、2022年のプロジェクトはウッドデザイン賞を受賞し、2023年のプロジェクトも市内で大人気。
石巻の太田邸は苦戦しながらも基本設計をして見積もり調整。今年竣工したい。
なんやかんや、「むきあう」ことができた1年だった。
他方、学生との向き合い方は試行錯誤が続く。
多分ずっとそうなんだろうなぁ。
でも、特に昨年は苦戦した。
年が離れてきて、経験の差が開いてくると、言葉の重みが変わってくる。
どうしても。
いくら隣で語っているつもりでも、もうそうはみてくれない。
そうなると、厳しい言葉が叱咤激励ではなく、傷つけるナイフにもなりうる。
そんなことを学んだ。
でも、言っていることは、感情的に喋っている訳ではなく、
全て、その時々の学生に必要なことを、見定め、伝えている。
が、伝え方が違うと伝わらない。
そこで、まずは目標を聞くようにした。
あなたがやりたいことや目指したいことはなんですか?
気づいたら当たり前だな、と。
学生の目標があり、そのための道筋や必要なことを伝える。
そうすると、途端に言葉は鋭利さを弱める。
そうか、対話の時間と量の上に初めて、厳しさは意味をなすのか、と。
思えば、2022年の子育て以降、少々時間を取るのが難しくなってきた。
それまでは当たり前にたくさん話して、飲みに行った。
でもプライベートの変化とプロジェクトの充実が、どんどん時間を有限にした。
その皺寄せが、ここ2年だったのか、と。
そんなことに気づいたのも大きい。
学生と「むきあう」方法が分かったのかもしれない。
ー
色々考えた1年。そして今年。
研究室紹介では、いま大切にしている3つの概念を伝えた。
少しずつ言語化を続けて、どうにか見つけたのかも、という考えでもある。
Purpose Thinking
目標を持って生きること。そして、他者と目標を共有し、そこからデザインを考えること
Social Good
建築を通して、社会を今よりちょっと面白くする。
Altruistic 利他の力は個人の欲望を超える。自分のためではなく、誰かの幸せを作るのが目標。
ー
法人では、2023年から、長野県から、元気づくり支援金という事業費をいただきながら、事業を拡大している。
合言葉は、「暮らしをつくる」。
自分がやっているのは、ものづくり・場づくり・家づくり・まちづくり・社会作り。
建築を15年くらい学んでたら、いつしかなんでもやっていた。
でもそれって、結局、自分がいる場所を楽しくしたかったんだなぁ、と。
良いものに包まれたいし、楽しい場にいたいし、快適に暮らしたい。
そして、自分のいるまちは楽しい方がいいし、近しい業界とか職場とか、社会全体が楽しい方がいい。
だから、なんでもやるんだと思う。
幸せなことに、今、自分は、この全部が出来ながら暮らしていけている。
だから楽しいし、そう思える人がたくさんになったら、社会はもっと楽しい。
そう。
だから、自分がいない街でも、このどれかのアプローチから、街や、暮らしを、楽しくしているだろう。
そんなことに気づいた。
そして、法人では、
どこかに行く観光ではなく、
日常の中にある楽しみを目的地にする「デイリーツーリズム」というものを試みている。
庭作ったり、発酵を楽しんだり、金継ぎをしたり。
そういう、暮らしの中のエトセトラを、買う、ではなく、つくる。
今年は醤油をつくる醤油メイトなる謎のコミュニティをつくるし、
お皿をつくる旅、というのを企画して、都市の人に平沢に来てもらう。
そう、暮らしはつくれるんです。
ー
「暮らしをつくる」
法人の合言葉を、もう少し深く考えてみる。
そうすると、我々が目指していることも、ちょっとずつ分かってきた。
すてる、から、まわすへ。
現代社会は、資本を介して誰もが不自由なく多くのモノに触れられる時代。モノを使うことによって、更にモノを生産し、新しいモノを購入し続ける。そうして生産力とGDPをあげて成長を続けてきた日本社会。今一度、大切なものが何かを考える時期なのではないか。
身の回りのモノを大切にし、長く使うこと。生活の中で手に取るモノを、目に見えるネットワークで再編すること。暮らしの中で消費されるものを少しずつ長く使う人生の相棒へ変えていき、お金を使うときに、誰の幸せに対してお金を払っているのかを考える。
そんなちょっとの変化だけで、幸せやお金がぐるぐる回る世界に変わっていくのかもしれない。
えらぶ。つくる。つかう。
身の回りで幸せやお金がぐるぐる回っていく社会のために、「選ぶ」「作る」「使う」の3つを大切にする。
まず、長く使う人生の相棒を選ぶこと。
次に、暮らしにまつわる色々なものを作る選択肢を持てること。
そして、できるだけ捨てないように使うこと。
この3つの原理で、暮らしはもっと豊かになっていくのかもしれない。
そのために、誰でも集える場所と、誰でも「つくる」ができる場所をつくる。
やることはたくさんだけど、
どうにか法人の目標ができてきた。
あとは3年くらい、走り続けたら、結構面白い団体になれる気がしてきた。
ーー
とまぁ、色々と考え、色々と実験してきたなぁ。
2023と2024は、セットな感じがする。
2023が思考を整理する時間なのであれば、
2024はその思考を現実に変えていく時間。
さて、進もう。
今年はそんな感じかなぁ。
それではみなさんまた来年。
Comments