先日、1-1 architectsという愛知県刈谷市を拠点に活躍している建築家作品の見学に。
神谷さんと石川さんが主宰する1-1 architectsは、SD reviewに3回も通っている若手のホープ。
神谷さんとは1年ちょっと前にはじめて一緒にお酒を飲み、その後名城大学の非常勤をお願いしていることもあり、定期的にお酒を飲んだり建築談義をさせていただいている。
同年代の力強い建築家。
土着的でブルーワーカーな佐藤とは対極的に、美しい空間を設えるイケメン。笑。
その最新作を、はじめて見学した。
敷地は愛知県名古屋市緑区。
名古屋の外縁に位置する同区は、その名の通り緑がたくさん。そんな緑を切り崩した住宅開発が多く見られるエリアで、斜面地に立つ家も多い。
名古屋はもともと激しい起伏を持つ土地のため、斜面地を開発した住宅地が歴史性の強弱に関わらず随所に見られる。しかも現在進行中で開発が進行している都市のため、斜面地を舞台としたスプロールは重要な都市トピックと考えている。
今回は、そんな都市外縁部の傾斜地に立つ崖地の建築の提案であった。
建物を語るのに外せないのが低コスト。そして建築家の職能の拡大。
低コスト住宅はそれこそ最小限住宅の議論がされていた戦後すぐの頃から試みられていることではあるが、彼らの作品は土地選びから始まる家づくりだという。施主からの依頼を受け、不動産屋と連携して安くて面白い敷地を探す。すでに多くの作品を手がけている彼らは、住宅を作る前からのネットワークを形成していた。建築家がコーディネートする範囲が広がっていることが今回の肝な気がしている。
建築そのものは、というと、最小限の手数と手法で設計を行い、美しい空間を生み出していた。内部に入ると美しい光とディテールと家具の空間に出会う。ボックス・イン・ボックスの構成をとっており、窓から入る光を適切に内部空間に取り組んでいる。空間自体は図式的で間違いのない構成。早い段階から構成を固め、内部空間の探究に注力する時間を長く取り丁寧なディテール処理に時間をかける体制は、これまでみたことのないスタイルで潔かった。低コストでありながら建築家作品としての空間性を担保していた。
一方で、自らが選んだ敷地との対応を追求していたかというと、葛藤の中で取捨選択していたようで、上物と敷地との対応関係には一抹の寂しさも覚える。非常に重要な都市トピックでの挑戦であったが故に、そこへの建築言語も欲しかったというのが正直なところ。ここから植栽が育つことで印象は変わっていくのだろうし、斜面地を飼いならす名古屋の住宅にとって、時間がたった後の斜面として捉えることに面白さもあると思う。ダイナミックな植物の成長と侵食を期待したい。
作品全体を通して、適切な取捨選択により、非常に綺麗な空間が形成されていた。建築家としての力量に感嘆させられたし、ディテール処理と予算の注力の仕方のバランス感覚から学ぶことはとても多かった。
お忙しい中ありがとうございました!
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