もものうらビレッジをはじめて1年が過ぎました。
山の木を伐り、製材し、建築としたこちらのプロジェクト。
建築に携わってきた全ての知識と熱量を総動員した、間違いなく自分にとって大きな位置付けにあるものです。もちろん反省はたくさんありますが...。
このプロジェクトを通して学んだことは、今の自分にも繋がっています。
あの時何をトライして、それが今にどう繋がっているのか。振り返ってみます。
まずは「木の値段」。
丸太1本の価格っていくらかご存知ですか?
こちらに面白い記事が。
かの有名な吉野杉でさえ、1本あたり1万4000円程度。
普通の杉は4000円です。山出しして保管されているものでです。
では桃浦ではどうだったか。
もものうらビレッジは、山の価格の査定からプロジェクトが始まっています。
まず山の木の査定をしてもらいました。
例えば、直径30cmの15mの木の場合、価格に反映される材積は0.481立米。
単価は6500円なので、3126円/本。
南向きで、昭和期にはサンファン・バウティスタ号の復元用木材として利用したと言われる地域の木です。
普通に売ろうとすると、ここから山出し・運搬費が引かれるため山主に入る金額は更に減ります。
運搬用の車が入らない条件下では山出し費用が更に嵩張るため、どんどん利益は減っていく。
だから大規模化するし、小さな山持ちは切ったら切った分だけ損をする。
だから切らない。
となります。
なかなかに複雑。
これは、土地所有(山主)・生産(山師)・出荷(森林業者・森林組合)・加工(製材)と、所有→出荷までの体制が複雑な林業ゆえの問題です。
農業では、土地所有者が生産し、農協で出荷するのが基本です。
漁業は所有の概念がなく、とった人が漁協に出荷。
林業でも企業体の場合は所有から出荷までが同一の場合もありますが、それ以外の普通の山持ちの場合は上記の体制になります。
昔ながらの家づくりでは、その場で製材までしたため、水分が抜け運搬にかかる手間が減り、かつ裏山から木をおろしたので距離的にも近く負担が少なかった。
これが持ち山の本来の在り方です。
従来の土地所有制度は残りつつ、その上で市場経済に乗せようとすると、上述のねじれが生じます。
さて、山出しからの価格です。
桃浦は県道のすぐ上だったためそこまで運搬費はかかっていません。
製材は持ち込みの「賃挽き」と言われる製材方法です。
こちらも的確。だいたい賃引きは12000円/立米といったところでしょうか。
ざっくり、直径30cm・4mの丸太の製材で4000円程度です。
つまり、理論値としては、4mの丸太を買って、自分で製材所に運んで、製材してもらうのにかかる費用は1万円以下。
ちなみに民家1軒に使う木は約100本とも言われています。
木の家づくりって、実はそんなに高い案件ではないのかもしれない。
これはあくまで全部自分でやった場合。ここに資本の論理がかかると、いろんなところでお金がかかります。
家づくりって大変だ。
でもやり方次第で、いろんな工夫もできる。
確かに市場経済には乗らない。
でもその過程はとても楽しいし、木を切ること、それを資源化すること。
それは国土の2/3が森林と言われる日本にとって大きな課題。
もものうらビレッジで実践したのは、その場の木で建てる。という原理原則。
挑戦したのは山の木の現代的な使い方。
そして現在もそんなことを骨身に応えながら、自分にできることを考えています。
ちなみに来週末は木の伐倒イベントを予定。
森林、とても魅力的。
