埼玉県熊谷市。
東京の郊外にありながら、緑豊かな郊外住宅地が拡がる。
東京を電車で埼玉方面に向かうと、少しずつ一つ一つの宅地が大きくなって行くのが確認できて面白い。
さすがにこの歳になって子供のように椅子に乗って窓をじっと見ることはできないので、椅子に座って反対側の車窓をじっくりと堪能する。
すると、ある時に森の中に入る。
緑に包まれた数秒間。
抜けると宅地は一気に大きくなる。
まさに郊外住宅地、といった景観の濃度がふっと高まる。
そんなこんなで車窓を楽しみながら到着する熊谷駅。
villa potagerがあるのは、そんな熊谷駅からバスで10分とそこから徒歩10分。歩いたら45分くらいかな?郊外にある河川沿いの住宅地の一角。
冒頭の文章に違わない、低層住宅と小さな路地がある、そんなヒューマンスケールの郊外住宅地。
川沿いを歩いているとたかさが低く抑えられながらも力強いフォルムの建築に出会う。
川の対岸からの風景。周辺に圧迫感なく佇む。
決して難しいことをせずとも、適切に入念に検討が繰り返されてきたことがわかる。
丁寧に作り込まれた作品。
コンセプトのポタジェ、とは食用と鑑賞を両立させる家庭農菜園。
「郊外の家は、そこまで大きくなくともよい。むしろ、庭をリッチに設け、そことの関係性で住宅を解釈することに意義がある。都心にはない生活の豊かさ、それを楽しむことが、郊外の住み方なのではないか。」
施主とも設計者ともゆっくり作品に関する話はできなかったが、
そんな声が聞こえてくる建築作品。
土間にパワーボードという素材が選択されている。子供が手に触れても違和感のない素材感。土間に表現されている光の溜まりが内外の連続性を雄弁に語る。
住宅を直線で貫く土間空間。この空間は生活の中心であり、中心として振る舞うに足る上部からの光、音の調整が行われていた。
アプローチかrあアトリエ・ワン出身という事実がにじみ出る。可愛い。
広くとられた庭は、様々なストーリーを提供してくれる場。
各室と庭の関係も絶妙。
この建築の施主は、埼玉県北本市で20代後半から30代にかけて駅前広場の再開発を通したまちづくりを担当していた方。
北本市は、上記の緑に囲まれた車窓体験を提供してくれる市。
そこで過ごした月日は、施主の骨身に沁み、結果として今回の建築を建設することになったのだと思う。都会でもなく、田舎でもなく、郊外の生き方の探求。そしてその力強さの立証。
設計者はその駅前広場を担当した方。
阿吽の呼吸でできた建築でした。
そしてもう一人。その再開発の駅前広場設計を担当したのはアトリエ・ワン。
この日は、アトリエ・ワンの貝島さんの50歳バースデーサプライズ企画。
全国から教え子が、事務所の新旧所員、そして北本市のまちづくりで関わった仲間たちが集まってのパーティー。
幸せが溢れた一日でした。
サプライズ!
祝!
建築設計にせよ、まちづくりにせよ、
その場をよりよくするための切磋琢磨を振り返る瞬間、それは何事にも変えられない喜びだな、と感じました。
振り返ったとき、誰かがいる。そんな喜びを感じられるよう精進します。