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  • nobusato

最近考えていること。2019年。

更新日:2020年1月1日


懐かしいタイトルです。 これを書いたのは2年半前。筑波大学世界遺産専攻で働き始めて半年。もものうらビレッジをやる前。石巻市水産業担い手センター事業が1年。

パラレル・プロジェクションズに参加するときに思想を考えたもので、振り返ってみると「あぁ、なるほど。」と思い当たるところがある。

今年の目標を書くのはこそばゆいんだけど、でも、その時々の現在地を考えるのは悪くないのかもしれない。

ーー

どんな場所でも、その土地、地域の文脈があり、魅力的な、個性豊かな建築が溢れている。一方で、それら建築が有する個性豊かな特徴は、見る者の審美眼をダイレクトに試す。

今年は生まれ育った関東を離れ、縁も所縁もない名古屋にきた。名古屋をぶらっと見たけど、どうにも中心部に住むのは落ち着かず、名古屋市と日進市の境くらいに家を借りた。千葉のNTで生まれ、千葉市、つくば市で学んだ自分の原風景としての郊外が、やはりどこか落ち着くようだ。そんな郊外を振り返ったとき、頭に思い浮かぶのは、同じ時期に、同じような外観の建築やキラキラした建築が「開発」された姿。名古屋の郊外を車や自転車で走っていても、やはり似たような印象を受ける場所はある。日本全国、どこでも同じような場所はあるのだろう(流石にTX沿線ほどのものはないが)。そういった環境がすぐ隣にあったから、私自身はそこまで違和感もなく受け入れられる。ただ、なぜそのようなものが量産されるのかを考える時期でもあった。名古屋にきて、これまで育ってきた環境を外からみるようになり、はじめて都市というものがリアルなトピックになってきた。

街を歩けば、経年変化や地域の生活文化が生み出した特徴的な建築に出会うことができる。名古屋は時代時代の建築が地形と一緒に開発の歴史を教えてくれて面白い。でもそれは、いつ頃発達したか、どんな生活文化があったのか、どんな職業の人が多いのか、どんな地形でどんな風が吹くのか、そんな情報を頭に入れ、それらの特徴と照らし合わせながら街を見てはじめて手にする情報である。建築に携わる人間は、おそらく持っていないといけないスキル。

でも、そのスキルは、隣の家から醤油を借りていた時代には当たり前だったのかと思案する。住みこなしている家や、いろんな人が使う建築は、冗長にその個性を語り、人々はそれを理解していたのではないか。一方で現代は、特徴や個性の判別ができなくなっている状況にあるように思う。その結果、「新しい」や「機能的」といった判断基準が重視されて、価値観やトレンドに重きを置く傾向にある。それはそれで重要だけど、個性豊かな建築も大切にしたい。30年以上その場にあり続ける建築は、ファッションのように流行に作用されてはいけないのではないか。

建築の価値を正しく理解し、その価値を自ら増強する。それができる人がたくさんいれれば、街はもっと魅力的になる。そんな気がしている。

昨年から学生と一緒に建築を学んでいるが、建築文化を正しく評価し、企画・計画・設計・施工を一連で考えられる人が増えればいいな、と期待を込めながら接している。それは、研究と実践、どちらも大切にしてきた自分が重視していることなのだと、学生指導を通して再認識する機会にもなっている。書くことはつくること。つくることは伝えること。

それゆえに、研究と設計、どちらも学ぶように口を酸っぱくして伝えているが、学生からしたら大変なようでいろいろと悩ましい部分はある。彼らにできることと彼らとできること、自分が知りたいことや教えたいこと、試したいことなどを考えながら、試行錯誤を続けたい。自分の知識を常に新しくして、新鮮な情報を提供できるようにするのも同時に大切にする。自分に厳しく、他人に優しくが教員としての今年のテーマ。

家成さんが「働くこと、遊ぶこと、食べることがどうかしてきている現代」と雑誌の対談の中で仰っていた。なるほど然り。身の回りの環境を面白がりつつ、遊ぶように仕事ができたら何よりだ。そんなことを思い出した。

建築は誰かを幸せにするための、誰かのためのデザイン。楽しみながらの方が、きっと幸せになる人は多いのではないか。

そんなことを考えた2019年の始まり。

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