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名城大学卒業設計審査会2021

1年の集大成、卒業設計審査会が終わりました。


今年はコロナで大変で、学生もいろんな不安の中、作業に勤しんでいた。 名城大学はなんとか、対面で授業できたし、制作室を解放しての作業もできた。これが何より。 仲間と同じ部屋で、くだらない話しながら、ダラダラといる時間。そこにこそ大学の一番の意味があるんじゃないか、と。


さて、名城大学の今年の作品は、全般に平均点が高かった印象。みんなが諦めずに努力をしたのだろう。難しい状況の中、みんなよく頑張ったと思う。ただ、突出した作品がなかった印象も。

例年、これは...、と、突出したいくつかの作品があり、そこを中心に議論が進む。

が、今年はそれらがなく、だいたい10くらいの作品が同じくらいの得票で上位にいた。


審査は、まず、4人組・6チームに分かれて、作品の前で学生発表とディスカッションをするポスターセッションを実施し、その後、審査員は投票を行う。


毎年出てくるタイポロジーに即して、いくつかの作品タイトルをあげる。


今年は、都市を題材にした作品が多かったように思う。

街区の中心部「会所」に着目したものや、ビルの周りに通路を配するものなど、

都市の隙間に何かを挿入するものが多かった。

・紡ぐ道 -都市に溶け込むミュージアム-

・会所再編成 -高層ビルに囲まれた都市空間の中で眠る-

・建法改革都市(ゼミ生)


対して、内なる葛藤と戦った建築が多いのも名城大の特徴。

こういう、思想に入り込める人は多くない。ぜひ今後も頑張って欲しい。

・感情と対話する空間

・静かなる自然の侵略 -人間主体の解体手法-

・何者にもなれない僕たち、私たちへ -自己確立を目的としたカフカ的建築の提案- ・週末読書-感性をより豊かにする余暇の過ごし方-(ゼミ生)


地元愛を下地に制作を行うものもある。これらは、共感を得られることが多い印象。

建築を学び終え、改めて地元と向き合うことから出てくる言葉は力強い。 ・岡崎やぐら計画 -生産緑地から花火を見上げるコミュニティ-

・瀬戸の記憶を積層するー陶土・珪砂採掘場の未来ー(ゼミ生)


あとは施設タイプごとの解を追求するものもある。

新しい概念を付随させて提案する必要があり、これは、卒制としての難易度は高いが、極めて重要な視点だと思う。

・育て、育つアパート-住宅機能の拡充による店舗と子育て空間のあり方-(ゼミ生) ・空き家のない世界-家仕舞いをする暮らしの可能性-(ゼミ生)

・生活特化地域 〜職住分離の『住』を考える〜(ゼミ生)


あとはマテリアルや地域性をよりどころに、その場にあることの意味や、建築のあり方を問い続けるものある。が、これは、フィールドワークを主たる背景にするため。、コロナの影響もあり今年度は非常に少なかった印象。


上記のタイポロジーを有しつつ、現代社会全般をテーマに、真摯に建築ができることを探す案が上位に入り込んでくるように思う。

審査会では、第1次投票後、通過者を発表する。

その後、通過しなかった作品について、きちんと一つずつ講評を行う。

おそらく、今までの人生で最も長い間、一つのことを考え続けるのだろう。

それなのに評価されない、というのは、非常に悔しい。

でも、これが全てではない。

「世の中のほとんどのことは、みる角度が変われば評価は一変する」

これは紛れもない事実。歴史が証明している。

気にしすぎず、反省して、負けるかって、奮起する。

ぜひそうして欲しい。


今年は、15名が通過した。

そして、通過者の講評では、それぞれの審査員が強く押す理由を述べつつ講評を行う。

この学生の作品は素晴らしい、との応援演説

この作品にはこんな課題があるがどうか?

など、それぞれの審査員の意図を共有した上で、いよいよ、受賞の可能性のある作品を選ぶ審査に。

2次審査の結果、受賞候補として以下の作品が選出された。

・児玉 成美:週末読書-感性をより豊かにする余暇の過ごし方-

・芝村 有紗:岡崎やぐら計画 -生産緑地から花火を見上げるコミュニティ-

・長谷川 真央:人間と人工知能の共生建築

・坂口 雄亮:静かなる自然の侵略 -人間主体の解体手法-

・矢吹 悠萌:育て、育つアパート-住宅機能の拡充による店舗と子育て空間のあり方-

・渡邉 拓也:紡ぐ道 -都市に溶け込むミュージアム-


ここからは、上位4作品を選出するためのディスカッション。

まずは、色々な意見がでた中で、学生からそれぞれの作品に関する補足説明の時間が取られる。その後、審査員と学生の質疑応答を行い、作品の良さを全員で判断。

再度の投票とディスカッションを経て、名城大学建築学科卒業設計賞が以下のように選出。


最優秀賞:

芝村 有紗:岡崎やぐら計画 -生産緑地から花火を見上げるコミュニティ-

優秀賞:

坂口 雄亮:静かなる自然の侵略 -人間主体の解体手法-

矢吹 悠萌:育て、育つアパート-住宅機能の拡充による店舗と子育て空間のあり方-

審査員特別賞(アーキテクト賞):

渡邉 拓也:紡ぐ道 -都市に溶け込むミュージアム-


名城の最優秀賞は、議論の末、地元愛に溢れた作品が受賞。 優秀賞2点は、シングルマザーを題材にしたシェアハウスと建物の終わり方を考え抜いた作品。 今年は学生の思いを語る時間を多くとった。そのため、そこで審査員の共感を得られた作品が最優秀賞に至った印象。


ちなみに、今回の最優秀・優秀賞は、2年の設計作品では評価されなかった学生、3年の設計作品では評価されなかった学生、これまでの設計課題を通して評価されなかった学生が選出されている。 課題を上手に解くことと、卒業設計で共感を集める作品を作ることの違いが改めて浮き彫りに。そして、受賞したみんなは、一度、自信をなくす時期があって、そこから頑張り切った。


さて、うちの研究室。 研究室からは、優秀賞と計画系奨励賞を受賞。でもそんなものより、みんながやり切った清々しい顔で卒制を終えたことが嬉しい。今年の舵取りは難しく、みんなが泣き出すゼミもあった。よく頑張った。

研究室全体の出来としては、過去3年間で一番よかったように思う。

現代社会の課題を考え、それを解決する事業計画を構想する。

今年の指導を通して、卒業制作で、事業構想的な帰着点を目指すことの正当性を感じた。

それはつまり、建築設計以上の価値を探求する行為で、設計の得手不得手の話ではない。

一緒に考えた時間を通して新たな角度を見つけられた。

あとは、真摯にスタディすることの尊さを、ようやく、学生に伝えられた気がする。


石橋 拓実:建法改革都市



児玉 成美:週末読書-感性をより豊かにする余暇の過ごし方-(計画系奨励賞)


早川 葵:瀬戸の記憶を積層するー陶土・珪砂採掘場の未来ー


矢吹 悠萌:育て、育つアパート-住宅機能の拡充による店舗と子育て空間のあり方-(優秀賞)


山田 明日香:生活特化地域 〜職住分離の『住』を考える〜


山田 侑希:空き家のない世界-家仕舞いをする暮らしの可能性-


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