名古屋に来て7年。
オープンハウスという文化がとても充実している。筑波にいたときはコミュニティの小ささと不勉強で、そんな文化があることを知らなかった。もちろん、知り合いのところは行っていたけど。
名古屋にきて、建築家作品に触れられる機会が多いことに驚いた。知り合いはすぐできるし、知り合いじゃなくてもいける機会が多い。
そんな理由で、見せてもらう機会が格段に増えた。 だから、見せてもらって、それでいて、ちょっと話しかけた時にじっくりお話しいただいた方には、僕からできる唯一のお礼として、文章を書いてお届けしている。
自分からみたその建築の魅力や可能性を、文章で伝えるようにしている。それを他の人は、批評と評してくれた。目指してるのは、僕の知識を総動員して,設計者がまだ気づかぬ、別の価値体系にも結びつけること。
さて。
今回は、正直驚いた。
東海建築のすごさを体感した住宅のお話です。
ーー
名古屋の建築ってちょっと特殊だよ。
って、来る前に誰かに言われた。
きてみて気付いたのは、業界の狭さ。
すぐにみんなと知り合える心地よさを感じている。
そんななかでよく聞くフレーズ。
名古屋は建築家不毛の地だった。
というお話。
東海にも良い建築家はたくさんいる。と思う。
でも、全国的な知名度や掲載がある人が少なかったのだろう。燻銀がたくさんいたのか。
そんな文化を変えたのが、シーラカンス名古屋の伊藤先生と、ワーク・キューブのみなさんだと。
そしてその10年後くらいに、一気に建築家が開業し、たくさん雑誌発表する。いまの50代前半から40代後半の世代だろう。
その下が僕らの世代。なんとなくの集中があるらしい。
(不勉強で間違ってたらすみません!)
さて、そんな、時代の契機になったかもしれない、偉大な大先輩、ワークキューブの作品を見せていただく機会がありました。
ちなみに代表の桑原さんは,筑波の大学院のリアルな先輩。
ー
名古屋の端のほうの地形が強い斜面地・守山区。
車で斜めにダイナミックにのぼる車道を走りながら、時折目に入る緑に、過去の地形と山の姿に思いを馳せる。
ああ、ここはきっと、長い歴史の中でずっと森だったんだろうなぁ。人間の開発力、すごいなぁ、と。
そんな地形豊かな大地に、慎ましやかに建っているのが、この住宅。
住宅は建築の原点とされる。
そして、住宅は、確かに施主のものであるが、使われ継がれる強度もあると良いと思っている。そして、使われ継がれるには、その用途は住宅に限る必要もない。
この住宅は、極めて良好な内部空間を持つ住宅。
でも同時に、オフィスとしても転用できるし、ギャラリーにもなりうる。
ただの1家族のためだけでない可能性が残っている住宅。 結局のところ、そういう長く生きる可能性のある住宅が、とても良い建築としての住宅な気がしている。
素晴らしい住宅と感じた理由はいくつか論じられる。
1・2階の間の蓄熱帯としてのスラブ。これが夏冬の内部空間を調整する。
建物の仕上げを全部無くしている躯体としてのRCはとても上手。
蓄熱帯を信頼しているから、2階は、内外を区切ることのみに特化した窓空間。
そして、内外境界を建物全体に導入して縦の連続性をうむ中庭。
お風呂の遊び心と実験。
そして、スイッチの位置や各種ディテールの老練さ。
こんなにも、密度の高い住宅設計はそうない。
それでいて、建築自体は、特定の誰かのために作られておらず、
住まい手にいくつもの可能性を伝えている。
だから、良好な住宅であって、住宅だけでもない。
これは、きちんと建築としての可能性を伝えている。
そんな素晴らしい建築に、感動した。
だからこそ、勇気を出して言いたい。
ワークキューブは、住宅作家ではないと。
でも、なぜかそう認識されている、とも。
その奥行きまで表現すると、とてつもない。
ワークキューブの良作は、住宅にあって住宅にあらず。
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