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  • nobusato

卒業設計審査会


先週末は卒業設計審査会でした。

名城大学では常勤と非常勤が一同に介し、1日かけて最優秀賞をオープンに決定するクリティークを開催しています。

今年は常勤5名と非常勤14名の計19名で審査。

最初は3-4人組・6チームに分かれて、各作品の前でディスカッションをするポスターセッションを行います。だいたい3時間くらい。

今回は、吉村真基さん(MYAO:http://mya-o.com/)、納村 信之さん(テレデザイン:http://www.tele-design.jp/)、高部修さん(高部建築事務所:http://takabeya.sakura.ne.jp/wp/)と回りました。建築家としてご活躍されている先生方と周り、自分に見えていない視点もあると痛感。様々な年代、視点からのクリティークは自分にとってもとても楽しい時間でした。笑い声の絶えないチームだったので、気がついたらオーディエンスもたくさん。の図。

ポスターセッションを終えたら、全員でのディスカッションが始まります。セッションを受けて全審査員で投票し、受賞の可能性のある作品を選んで行きます。

投票は誰が誰に入れたのかも明かされるため、極めて透明度の高いクリティークとなり、あぁ、この先生と思想が近いのかな?なんてことも考えたりします。

ただ、この段階、厳しい。

純粋に全作品の得票数が晒されるため、ショックを受けてしまう学生も多数。この作品はこんな点が素晴らしいがこんな点で及んでいない。でも、この学生には様々な可能性がある。といった話をします。

かなり悔しいだろうな、と思います。半年とか1年かけた作品に賛同が得られず、場合によっては酷評も受ける。

学生には悔しさを忘れないで欲しい。この悔しさを糧に、選ばなかった我々審査員がボンクラなんだ!!っていうくらいの活躍を将来して、見返して欲しいです。

さて、ある程度の票数を獲得した作品まで絞ったら、再投票して今度は上位の作品についてディスカッションしていきます。

この学生の作品は素晴らしい、との応援演説

この作品にはこんな課題があるがどうか?というクリティーク 学生の応戦

などなどを経て、最後は決選投票。そして順位が決定。

7時間近い長丁場で順位を決める過程は、極めて透明度が高く、我々教員陣も常に学生の目にさらされているという緊迫感もあります。正直、学生が羨ましい。僕が学生時代はどんな審査があったのか、何を評価されたのかは全くわからず、ただ紙で順位が張り出されていました。だからこそ、一生懸命、審査をします。

そんなこんなで終わったフルパワーの1日。以下、雑記です。

19人もの教員+建築家が7時間近くをかけるだけあって、評価される作品は妥当なものなでした。その1週間前には学内でパワーポイントによる審査も行いましたが、ポスターセッションはパワポみたいにテクニックで誤魔化せない。模型とパネルを前に言葉を交わすことで、純粋な1年間の蓄積が問われます。完成度、思想の深さ、設計技術、将来性などがダイレクトに評価されます。ただ、審査員によってどれに重点をおいて評価するのかは異なります。

昨年末宮城大学でレクチャーした際に、中田千彦先生と「卒業設計の審査において社会性なき作品は土俵にすら立てない」というようなディスカッションをしたことを思い出しました。設計の前段階で深く考え込んでいることや、地域リサーチをきちんとしていることなどは、評価の前提条件となっている印象がありました。案の深さがあぶり出されるため、少ない期間のリサーチやアイデアのみのもの、完成度は高いが未来へのメッセージが弱いものなどには物足りなさを感じてしまいます。

一方、自分の深い思想に入り込み、作品に反映させたような作品も見受けられました。自分と徹底的に向き合うことを、この時期、この年齢で行うのは、とても意義深いものだと思います。ただ、それを一人で完結させてしまうのは惜しい。伝わらないから一人で表現するのでなく、伝える努力を惜しまず、教員とディスカッションを重ねる。逃げずに自分のデザインの妥当性を検証する。そんな手順の重要性を痛感しました。同時にこれは我々教員陣の課題でもあります。学生とのディスカッションを避けずに、がっぷりおつで議論することを、若いうちは続けないとな、と思いを新たにする機会でもありました。

ちなみに自分の世界に入り込んだ卒制は割と好きです。(評価はしていませんが)この段階での評価を気にせず、自分の思想を研ぎ澄ます姿には共感が持てます。彼らは将来大化けする可能性もあるのではないでしょうか。

また、評価されていないものの中には、リサーチを重ねたゆえに既存に愛着を持って小さな操作に終始してしまったものもありました。気持ちはわかるが卒業設計としてはなかなか評価に困る。ここで思い出したのが、まちづくりの活動で痛感していること。住民の希望だけを聞いていても、その先にあるのは緩やかな衰退となることが多い。(必ずしもそうではありませんが)外部の視点など、ある種の劇物を挿入することで、前に進む事例も多い。卒業設計も然りで、住民に寄り添いすぎて、延命のような操作になることは好ましくないと思います。

1年間の集大成。非常に長く、そして充実した1日でした。

最後にうちの第1期ゼミ生たちの作品です。全く知らない先生の思想や言語を理解するのに苦戦した前期、ようやく言葉が通じ出した半年で作品を作り上げるのは、極めて難しいことだったと思います。授業やプロジェクトで教え込むこともできていないゼロベースからのスタートで、求めているクオリティやアウトプットの方向性など、なかなか共通の絵を描けなかった部分もあります。でもその中で頑張って、力強い模型やドローイング、リサーチを見せてくれました。厳しくやってきたけど、よく頑張ってくれました。

妄想都市ノ解体絵図〜抽象画から見た都市空間の気づき〜:最優秀賞受賞

それいけ!ひとりたち!

風が織りなす景色〜地域文化を伝える拠点の提案〜:環境賞受賞

杣人の記憶(正式には他研究室所属)

農ととなりあう暮らし〜地方の持続可能なまちづくりの提案〜

指導した学生が評価されるのはとても嬉しいですね。でも同時に、全員が逃げずに自分のベストを尽くしてくれたことが何より。卒制なんて、失敗しても良い。自分と向き合うこと、やりきることが何より大事。足元を見て、明日からまた頑張りましょう。

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