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  • nobusato

名城大学卒業設計審査会 2021s

更新日:2022年3月15日

卒業設計とは探求の時間である。


そもそも、

僕自身が自分のベストを探求する時間が好きだし、

他者のベストの探求成果を見るのも、楽しい。


だから、それまでの4年間の全てをぶつける卒業設計を見るのは、楽しい。


そう、卒業設計とは、

それまでの建築人生の全てをぶつけ、

そして、社会の未来に挑むものなんだろうと、

僕は思う。


さて、今年の卒業設計。


まずは平均点が高かった。他研究室も含めて。

みんながみんな、「卒業設計」に取り組む中でできる、最大限の努力をしていたし、

4年生の1年間、ないしは半年間を注ぎ込んだ結果をきちんと表現していた。


だからこそ、最終的な票に結びついたのは、

自分の建築との関わりの4年間を、相対的に見れた作品だったように思う。


それはつまり、今年の卒業設計のレベルが高かったかということでもある。

つまり、最後の数ヶ月頑張っても太刀打ちできない。

し、4年間、あんまり頑張ってなくても到達しない。

そんな深さが問われた時間出会った。


最優秀「芽吹くいぶき −伊吹山石灰石鉱山における自然回復建築-」は、これまでの自分をきちんと反省し、これからの自分を表現した学生だった。

出来上がった作品が素晴らしいかと言われると議論が分かれるが、彼の生き方には全面的に賛同する。

2,3年生の時に見た時は表層的なデザインだったのが、最後には本質的な問いをしていた。


続いて、2位「いきものうつわ -グレーの街から共生へ、育んでつくる未来-」には、うちの学生が。

素晴らしい、本当に素晴らしい作品を作り上げてくれた。

彼女とは、1年生の頃から、うっすらと会話を重ねてきた。大切にしたいものが近いから、特に最後の2年間は、楽しい時間を過ごせた。

卒業設計で彼女と議論する時間は、本当に楽しかった。

議論すると、ちょっと上を見せてくれる。

だからこちらも負けじと疑問を投げかける。

そしたら次にはもっとよくしてくる。

群を抜いて口下手なのが玉に傷だけど、それも彼女の良さなのだろう。


3位は、あまり関わりのなかった学生。

でも、彼女が作る設計は、惚れ惚れするほど美しい。

丸を使った作品の平面図で、息を呑んだの初めて。

美の探求を続けた彼女らしい作品「葡萄で繋ぐまちの風景-生産緑地から人の居場所への変換-」だった。

あれだけ社会性の武装をしたのに、最終的にみんなが彼女の設計力の話に終始したのは、きっと興味と強さが明確だから。

是非そこを伸ばして欲しい。


4位「4代目の佐野家 -既存住宅の分解と再構築による材継ぎ-」はうちの学生。

この卒制は、すっごく楽しかった。

2年生、彼女は群を抜いて優秀だった。

だから同時に本音が見えなかった。

3年で、彼女の本当に好きなことがわかった。

そして4年、自身の弱点を教えてくれた時、ようやく自分の教え子になった気がした。

本音で話してくれて、一緒に卒制を考えられて、よかった。

出来上がったものは、最高に面白かった。


それ以外の学生で印象的だったのが、


「SHARE BOKU〜産業動物の存在を日常に感じる〜」

「障害者就労と地域社会の向き合い方の探求−就労継続支援施設の改築から−」

これらは、ものすごく良いプロジェクトだった。

自身の興味をきちんと精査し、かつ、現場で、切実な現状を学んでいた。

その上で、建築サイドからできるものが何かを、真摯に、きちんと、考えていた。


現場を理解しようとせずに、自分の表現に走る作品が多いなかで、異彩を放っていた。

こういう作品を、きちんと評価したい。


あとは時間軸を扱う作品が苦戦していた。

「廓 -文化財未満の価値のある建築の行方-」 「水と棲まう街-川との付き合い方から考える水産業の再建-」

「百々邂合 −貯木場跡を拠点とした竹の循環活用-」

など。


これはもしかしたら、現代が、明確に、過去よりも未来への接続を求めているからなのかもしれないな、と、発表と講評を聞きながら考えていた。

時代は変わる。

でも、過去を見ることの重要性は、失いたくない。

同時に、現代との照らし合わせが必須になってきたのであろう。

特に前者二人はうちの学生で、苦戦していた。

「まち歩き」からその地域の魅力を探し、そして、一般に評価されていないものを建築を介して翻訳する。そんな町医者的視点への興味は、持ち続けて欲しい。リアルでは効果的なアプローチだから。


あとは、うちの作品は、みんな、クライアントワークではなく、今社会に存在しない案件を作ろうという意思が見えていた。

ということにも、どこか面白さがあったし、それが特徴なんだろうな、と思った。


現代社会の課題を感じている誰かを見つけ、表現する。

のではなく、

現代の課題にダイレクトに操作をする。それが面白かったら誰かついてくるだろう。

という視点が、

きっと我々チームであり、同時に、学外評価を得ることも多い理由の一つな気がした。


ともあれ、本当にみんなよく頑張っていた。


企画的面白さを内包する

「高齢者主体型都市 -空きビルを活用した複合型福祉施設の提案-」

「境界を捉え直す -郊外における公私領域を混在させる道路更新計画-」

「災害と暮らし -商店街における事前防災計画-」

「郊外暮らしの芸術祭 ー主人公:核家族が変化したまちー」 は、面白いんだけど、空間で追いきれなかったのが、課題かと。

企画と連関と空間。

それらがマッチすると、素晴らしい作品になる。


「週末林業のすゝめ -郊外の杣人が始める自立共生的な暮らし-」

は、すっごくよくできていたし、

プレゼンの中でとてもハッとした瞬間がった。

でもそれら線が一本になるためのアシストが、多分必要なんだろうな、と。


最後に。

毎年真剣勝負の先生方への感謝を込めて。


また来年、楽しくなるように、1年間頑張りましょう。






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毎年、新年になると書く、現在地の確認。 そして、昨年を思い返す。 名古屋に来てから定期的に書くようになったから、もう6年目。 2016年は「地域の自助・共助・公助」 2019年は「建築文化」 2020年は「リサーチング・プレーヤー」 2021年は「楽しいが身の回りにあること」 2022年は「生活民芸舎」 2023年は「むきあう」 2024年は「暮らしをつくる」 ーー 2023年は、プロジェクトが

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